理学療法士は歩行動作を分析して、必要であれば杖の処方をすることがあります。
しかし杖にも種類があるのはご存じでしょうか。
今回は杖の種類と使い方について紹介します。
- T字杖
- 松葉杖
- ロフストランドクラッチ
- 肘支持型杖
- 多脚型杖
- その他の杖
目次
1.T字杖
最もポピュラーな杖です。
持ち方は人差し指と中指の間に杖の部分が来るように握ります。
高さは杖の先を持ち手と同じ側の足先の前方20cm程度の場所についた状態で、肘をだいたい30~40度曲げた位置になるように調整することで機能的に使うことが出来ます。
杖が長すぎると肩が上がってしまい、身体も横へ斜めになるような姿勢となります。
またうまく支えとならないため、より疲労しやすくなる可能性があります。
また杖が短すぎると身体が前に曲がってしまうため、腰が曲がったような姿勢となってしまい、腰痛などの影響が考えられます。
また歩き方は、悪くした方の足とは反対側に杖を持ちます。
よく間違えて悪くした方の足の方で使う方がいますが、人間は歩く時に前へ振り出した足と反対側の手が前に振り出されています。
つまり本来の動作を考えると、「悪くしている方の足」が地面に着く時に支えが必要となるので、その時振り出している「反対側の手(杖)」で支える必要があります。
間違って使うと、身体に無理がかかるので疲労や痛みの原因となったり、ついた杖と足の幅が狭いためバランスを崩しやすいため注意が必要です。
これはどのような杖でも同じように使う必要があります。
2.松葉杖
主に骨折した人が経験したことある杖かと思いますが、最大の特徴は2本セットで使うことです。
この杖の最大の利点はケガをしている方の足に全く体重をかけずに歩くことが出来るようになることです。
逆に言うと、足をつくことが出来るのにこの杖を使うとあまりメリットがありません。
持ち方は長さを調整して脇で挟むような形をとれるようにします。
長すぎると脇を圧迫し、脇の下にある重要な神経や血管を圧迫することに繋がるため注意が必要です。
同様に脇を閉めずに使うと、上記のような現象に繋がるため必ず脇を閉めて、杖と脇の間に空間が作られる程度にして使用しましょう。
歩き方は両杖を前に出した後に、杖へ全体重をかけて足を前に振り出します。
注意点は慣れてくると杖より前に足を振り出したくなることです。
杖でついている場所より前に足を振り出すと、身体がのけ反る形となるため、後方へ転倒する可能性が非常に高く、ケガをする可能性があるため絶対に足は杖と同じ位置か少し手前までで振り出すようにしましょう。
3.ロフストランドクラッチ
手だけではなく腕も利用して使う杖です。
杖を握る場所だけはなく、腕へも負担が分散されるので主に握力が弱い方向けの杖となります。
使い方や歩き方はT字杖と同様です。
T字杖の適応が難しい方にも使えるのが利点ですが、やや値段が高くなることと前腕を支える場所の分やや場所をとってしまう点が難点です。
4.肘支持型杖
手ではなく肘をつくような形で使用する杖です。
適応となる対象が少ないことから使われることはあまり多くないですが、主に握力が全くない方やリウマチなどで手指への負荷が禁忌の方が適応になります。
5.多脚型杖
その名の通り杖の先が多く分岐している杖です。
一般的には4点杖が多いと思います。
T字杖よりも更に安定しているため、主に片麻痺患者のリハビリなどでよく使われています。
T字杖では不安がある方などはこの杖から始めることで、動作を安定させたり慣らせることで運動機会の確保、T字杖への移行などが利点としてあげられます。
デメリットとしてはやや重くなってしまうこと、大きくなるためややかさばってしまう点があげられます。
6.その他の杖
ウォーキングポールというものがありますが、これはあくまでウォーキング用の杖であり、上記で紹介したような杖と違って体重を支えるという効果には乏しいです。
そのため杖がないからとこのウォーキングポールを使用する方がいますが、あくまでも散歩にて効果を発揮する杖であるため、転倒リスクも高くなることからオススメは出来ません。
この杖の特徴としては、統一した形ではありませんが握る場所がスキーのストックのように縦になっているものや杖の先にバネが入っているため歩行の負担を減らすという点があげられます。
もちろん散歩では足腰への負担軽減や姿勢の矯正などメリットが多いため、使用する場面が適切であれば非常に有用です。
杖は用途に合わせて使用しないと効果を発揮できません!
簡単に杖の種類や使い方などを紹介しました。
街を歩いていると間違って使っている人をかなり多く見かけます。
リハビリでは何度でも指導するため正しく使えている方が多いですが、自身で杖を使い始めた方が間違ってしまうことが多いのかなとは思います。
杖を上手く使うことで歩行距離の増大、疲労感の低下など運動効率も上がるため日常生活への良い影響に繋がりますので、是非参考にしていただけたらと思います。