現代の日本人とは切っても切り離せないぎっくり腰、経験したことある人も多いと思います。
ドイツでは「魔女の一撃」と呼ばれているほど強烈な痛みを伴う症状が現れ、その場から動くことが出来なくなってしまう恐ろしい疾患です。
今回はぎっくり腰がどのような時に起きるか、またどのように予防できるのかをまとめてみたいと思います。
目次
1.腰痛の定義
2019年に入ってから、日本整形外科学会と日本腰痛学会の監修による『腰痛診療ガイドライン2019』が発刊され、CareNetでは以下のように紹介されています。
腰痛は「疼痛の部位」、「有症期間」、「原因」の3つの観点から定義された。疼痛の部位からの定義では、「体幹後面に存在し、第12肋骨と殿溝下端の間にある、少なくとも1日以上継続する痛み。片側、または両側の下肢に放散する痛みを伴う場合も、伴わない場合もある」とされた。有症期間からは、発症から4週間未満のものを急性腰痛、発症から4週間以上3ヵ月未満のものを亜急性腰痛、3ヵ月以上継続するものを慢性腰痛と定義した。原因別の定義では、「脊椎由来」、「神経由来」、「内臓由来」、「血管由来」、「心因性」、「その他」に分類される。とくに「悪性腫瘍」、「感染」、「骨折」、「重篤な神経症状を伴う腰椎疾患」といった重要疾患を鑑別する必要がある。
引用:CareNet https://www.carenet.com/news/general/carenet/48021
簡単にまとめると腰痛は
- 疼痛の部位
- 有症期間
- 原因
これら3つの観点で定義され、そのうち有症期間は以下のように分けられます。
急性腰痛 | 発症から4週間未満 |
---|---|
亜急性腰痛 | 4週間から3か月未満 |
慢性腰痛 | 3カ月以上の継続 |
つまりぎっくり腰は急性腰痛に当てはまります。
それではぎっくり腰はどのような状態なのでしょうか。
実は現在もはっきりとわかっていないことが多いです。
筋肉や骨、関節の炎症や微細な損傷とも言われているものの、画像診断でもわからないことが多いとされています。
ただしぎっくり腰を繰り返したり強く損傷した場合は慢性腰痛や椎間板ヘルニアなどを誘発・合併に繋がるため、更に悪化していく可能性があるため油断は禁物です。
2.ぎっくり腰の誘発動作
突然起きるぎっくり腰は物を持ち上げたり下ろしたりする動作中に起こることが多いとされています。
どういった点に注意すればいいのかいくつか確認していきましょう。
・しっかりと膝を曲げる
中腰となって重い物を持ち上げる時、もし20kgの物であれば腰におよそ400kgf弱の負荷がかかると言われています。
腰だけにこれだけの負荷がかかることでぎっくり腰を誘発してしまう可能性が高くなります。
しかし膝を軽く曲げるだけで300kgf弱まで負担が軽減するため、まずは膝を伸ばさずしっかりと曲げることを意識しましょう。
腰よりも足の筋肉の方が強力な筋肉であるため、より安全に支えることが出来ます。
重心が低くなることも腰への負担を減らすことに繋がります。
・身体を捻じらない
重い物を持ったまま身体を捻じる動作を行うと、左右均等にかかっていた負担が片方へ偏るためこれもぎっくり腰を誘発することとなります。
そのため重い物を持ち上げた後は身体は固定し、出来る限り捻じらないようにしましょう。
・出来るだけ身体と密着させる
物を持ち上げる時、自身の身体と物の間ではてこの原理が働きます。
物を持っている手が作用点、持ち上げる肩の筋肉と力点、肩が支点です。
支点から作用点までの距離が短い方が必要な力は少なく済みますので、作用点を支点に近づける=物を体に密着させることで必要な筋力を少なくすることが出来ます。
・無理をしない
男性にありがちですが、力仕事を張り切りすぎて重すぎる物でも頑張ってしまうことが多いように思います。
物を持ち上げようとする時にどの程度重いかはおよそわかるかと思いますが、大きかったり特殊な形状で持ちにくい時は他者に協力を求めることも大事なことです。
腰を痛めてしまった方が作業もストップしてしまい、結局他の人の助けを借りることになってしまうのであれば最初から協力を求めた方がいいと考えるようにしましょう。
・持ち運ぶ環境を考える
例えば重い物を運ぶ時、その動線上に別の物が置いてあったりした場合は避けようとしなければなりません。
その際に身体を捻じるといった危険な動作を誘発する恐れがあります。
そのため物を持ってからでは対処が難しいので、持ち運ぶ前に自分が通る動線上に障害物がないか確認をしておきましょう。
また大きい物を運ぶ場合は本当に通ることが出来るのか、どのように運べばいいのかを考えておくことも大事です。
物を持ったままその場で考えることはより疲労することにも繋がるので腰痛のリスクも高くなります。
上記の内容は介護でも同じことが言えます。
介助する相手に対しての車椅子やトイレなどの移乗動作も同様に考えることで、ぎっくり腰を予防することに繋がるでしょう。
3.もしぎっくり腰になってしまったら
どんなに注意してもぎっくり腰を100%回避するとは言えません。
なってしまった場合はどう対応すればいいのか考えてみましょう。
まずは痛くてその場から動けないと思います。
なので無理をせず楽な姿勢を取ります。
注意しないといけないのは仰向けで足を伸ばしてまっすぐ寝ると、骨盤が筋肉によって引っ張られ、その結果腰椎をより反らせてしまうことになってしまいます。
そのため両膝を曲げて下にクッションを挟むなどして腰が反らないよう注意しましょう。
通常数日以内に改善することが多いですが以下の症状がある時は要注意です
・数日経過しても痛みが続く
・安静時でも痛みが続く
・足のしびれや脱力、感覚障害がある
・排尿障害がある
これらの症状の場合はただのぎっくり腰ではなく、脊椎すべり症や椎間板ヘルニアなどの合併に繋がっている可能性があるため、病院にて医者の診察を強く推奨します。
特に下2つのような神経症状が出現している時は救急車を呼ぶことも検討した方がいいでしょう。
4.腰痛の予防
慢性腰痛に対する運動療法の効果はエビデンスがある一方で、ぎっくり腰が発生した直後に行う運動療法の効果についてはエビデンスが不明とされています。
そのためいかに発生させないかということが重要になります。
前述の通り、1つ目は動作全般の見直しです。
動作中における発症が最も多いため、普段から意識して生活することが重要になります。
2つ目は身体の柔軟性改善、体幹筋の筋力向上です。
これらに関しては様々な方法があり、個人の状況によってどのような運動が必要になるかが大きく変わります。
日本理学療法士協会で腰痛体操のリーフレットを公開しているため、紹介します。
引用元:日本理学療法士協会ハンドブック
http://www.japanpt.or.jp/upload/japanpt/obj/files/aboutpt/handbook03_p9-11.pdf
慢性腰痛の方は疾患によって症状を悪化させてしまう可能性もあるため、必ず診察先の医者や理学療法士と相談の上で運動メニューを決めてください。
以上、ぎっくり腰についての記事でした。
簡単にまとめると
発症してからの対処よりも予防がまず大事
予防のために日常の動作や意識の見直しが必要
万が一発症した場合は無理せず、症状に合わせて診察を
以上3点が最も伝えたかった内容となります。
ここまで読んでいただきありがとうございました。